2016年08月31日

エニグマ 14人の登場人物

今回のチラシは、エルガーのエニグマ変奏曲に登場する14人のシルエットをデザインしてみました。

イギリスの作曲家サー・エドワード・ウィリアム・エルガー(1857–1934)は、47歳でイギリス準男爵に叙されたほどの国民的大作曲家となりましたが、作曲家として身を立てるまでには時間がかかったようです。29歳で8歳上のキャロライン・アリス・ロバーツと出会い、3年後に結婚。彼女の献身的な支援によって徐々に名声は高まり、42歳のときに作曲したこのエニグマ変奏曲でその地位を不動のものとしました。

 ある日、エルガーの弾く旋律に耳を止めたアリス。彼女を喜ばせようと、友人たちの特徴を捉えて肖像画を描くようにその旋律を変奏させていきました。それぞれの変奏曲にはイニシャルが付いています。エニグマはギリシャ語で「謎解き」という意味がありますが、「どの曲が誰なのか?」、作品発表当時は皆がこの楽しい謎解きに夢中になったことでしょうね。

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1. C.A.E.(キャロライン・アリス・エルガー)
エルガーの愛妻。10年以上連れ添った夫婦なのに、メランコリックで情熱的な曲調を不思議に思いましたが、出会ったばかりのアリスの印象と聞いて合点がいきました。恋に落ちた作曲家のせつない心情を垣間見るようです。ちなみに、かの有名な「愛の挨拶」は婚約の記念にアリスに贈った曲です。

2. H.D.S-P.(ヒュー・デイヴィッド・ステュアート=パウエル)
エルガーとよく室内楽を演奏したピアニスト。彼のウォーミングアップを真似しています。まさに腕自慢の指ならし!

3. R.B.T.(リチャード・バクスター・タウンゼンド)
アマチュア劇団で個性的な役を務める俳優。低い声から高い声まで自在に声色を変えることが得意だったそうで、その特徴が曲にもよく表れています。

4. W.M.B.(ウィリアム・ミース・ベイカー)
ワーグナー好きの軍人。軍隊調の大声で喋り、威圧的で横柄な態度を取ることが多かったようです。「彼がドアを開けて出て行くところにそっくりだわ!」。

5. R.P.A.(リチャード・P・アーノルド)
大詩人マシュー・アーノルドの息子でピアニスト。真面目な会話の間にユーモラスな話を織り交ぜる癖があったそう。そういう人、けっこういますね(^_^;)

6. Ysobel(イソベル)
エルガーの弟子。ヴァイオリンの生徒でしたが、ありふれているという理由でヴィオラに乗り換えました。冒頭の旋律はエルガー先生が彼女に課した練習曲だそうです。

7. Troyte(トロイト)
建築家。いまだに現存する作品が数ありますが、特筆すべきはエルガーとアリスの眠る墓石でしょう。エルガーとの友情は、エルガーが亡くなるまで続いたそうです。ピアノが好きでエルガーに習いますが、なかなか上手くいかず癇癪を起こし、最後は大喧嘩になってしまう様子が描かれています。

8. W.N.(ウィニフレッド・ノーベリー)
ウースターフィルハーモニーの事務員。明るくのんびりとした性格と、彼女の住む18世紀に建てられた館「シェリッジ」を表した優しい曲に仕上がっています。

9. Nimrod(ニムロッド)
楽譜出版社に勤めるドイツ生まれのアウグスト・イェーガー。ニムロッドは旧約聖書に登場する狩猟者のことで、イェーガー(ドイツ語で狩人)とかけたようです。作曲家として悩むエルガーに、難聴で苦しんだベートーヴェンと、そのピアノソナタ「悲愴」について語り、スランプから救いました。ピアノソナタ第2楽章の響きをもとにした荘厳な音楽。「君の清く正しく愛すべく誠実な魂を描いた」。

10. Dorabella(ドラベッラ)
きれいなドラ。エルガー夫妻が可愛がった近所に住む少女、ドーラ・ペニーの愛称。のちにパウエル(第2変奏)の夫人となります。

11. G.R.S.(ジョージ・ロバートソン・シンクレア)
ヘリフォード大聖堂のオルガニスト。彼の愛犬ブルドッグのダンは、ある日、散歩の途中でワイ川に落ちてしまいます! ダンは流れに逆らって必死に泳ぎ、やっとのことで岸にたどり着くことができました!

12. B.G.N.(ベイジル・G・ネヴィンソン)
著名なチェリスト。エルガーとパウエル(第2変奏)とはトリオを組んで演奏していました。チェロのソロによる滋味深い旋律は、後年作曲されたチェロ協奏曲を思い起こさせます。

13. * * *
謎の人物。何人かの女性が候補にあがっていますが、明らかになっていません。エルガーはたいへんな愛妻家といわれているけれど、愛したのは妻だけではなかった? この曲に、しかもロマンツァなんて題名を付けて、しかもこの順番で謎の女性を持ってくるなんて……。でも、忘れがたい、秘めた想いは誰の心の中にも残っているのかもしれません。

14. E.D.U.(エドゥー)
作曲家自身。エドゥーはアリス夫人がエルガーを呼ぶときの愛称。アリス(第1変奏)とニムロッド(第9変奏)が再び現れるのは、二人への深い感謝の印でしょう。愛と友情と自信に満ちたフィナーレは、フルオーケストラの響きとともに壮大に締めくくられます。

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2013年12月23日

第32回定期演奏会の聴きどころ

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演奏会のチラシが刷り上がりました。チラシの裏に掲載している今回の演奏会の聴きどころをご紹介します。

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色とは、光の波長の長短によって、目の網膜が受ける刺激が異なるために生じる感覚のこと。目でしか感じられないはずの色という言葉が、音楽の世界でもしばしば使われるのは、なぜだろう。あたたかい音色、色彩感溢れる演奏、金色に輝く音……。目で見る色と耳で聞く音が、私たちに同じような刺激を与える瞬間があるのかもしれない。

ベルギーの作曲家、ベルト・アッペルモント(1973− )のトロンボーンのための「カラーズ」は、まさしく色をテーマにしていて、イエロー、レッド、ブルー、グリーンの4つの部分で構成されている。原曲は吹奏楽とソロトロンボーンのための協奏曲で、1998年に作曲された。たいへんに人気が高く、世界中の熱いリクエストに応えて2008年にピアノ伴奏版が発表された。そして、本日、オーケストラ伴奏版が世界に先駆けて演奏される。

「マンフレッド」は、ロベルト・シューマン(1810−1856)が作曲した独唱と合唱とオーケストラのための劇付随音楽で、その序曲は、この上なくドラマティックに始まる。演奏会の後半には、シューマンが、その才能を「新しい道」と絶賛したヨハネス・ブラームス(1833−1897)の交響曲第1番を取り上げる。ベートーヴェンの交響曲を意識するあまり、この最初の交響曲の着想から完成まで21年を費やしたというが、その年月に見合う傑作である。

原色で明快に色分けされたカラーズに比べ、ロマン派の2作品はもう少し複雑な色合いを帯びている。たくさんの美しい色を耳で感じていただくことができるだろうか。

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ブロカートフィルハーモニー管弦楽団第32回定期演奏会
2014年3月30日(日)  午後2時開演 (午後1時30分開場)
すみだトリフォニーホール 大ホール (錦糸町駅から徒歩5分)

指揮:桑田 歩  トロンボーン:吉川 武典

シューマン 劇付随音楽「マンフレッド」序曲
アッペルモント トロンボーンのための「カラーズ」(オーケストラ版世界初演)
ブラームス 交響曲第1番 ハ短調 作品68

入場料 自由席 (一部に指定席がございます)
前売り 700円 当日 1000円 (当日券は午後1時30分から販売開始)
*申し訳ありませんが、小学校入学前のお子さんの入場はご遠慮いただいております。ご了承ください。

チケットお取り扱い
トリフォニーホールチケットセンター TEL 03-5608-1212 (営業時間 11:00-18:00)
東京文化会館チケットサービス TEL 03-5685-0650 http://www.t-bunka.jp/ticket/

公演に関するお問い合わせ先は こちら でご確認下さい。

*車椅子でのご入場をご希望の方は、3月23日(日)までに公演お問い合わせ先までご連絡ください(定員がありますので、お早めにお申し込みください)。
*チラシの画像をプリントアウトして当日ホールにお持ちいただくと、前売り料金700円でチケットをご購入いただけます。チラシ1枚で何名さまでも有効です。

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2013年01月17日

第31回定期演奏会の聴きどころ

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演奏会まであと一ヶ月弱となりました。チラシの裏にも掲載しておりますが、今回の演奏会の聴きどころをご紹介します。

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フランスの詩人ヴェルレーヌの詩集「艶なる宴」に、「君の心は洗練された風景画のようだ。その中で、人々は魅惑的な仮面(マスク)とベルガモ風の奇抜な衣装(ベルガマスク)をまとい、リュートを弾き、踊りながら歩いている。けれど、その仮面の下には悲しげな表情が隠されている」という一節がある。モナコ皇太子アルベール一世は、「マスクとベルガマスク」と題する一幕の舞踏付きディヴェルティスマン(嬉遊曲)のための曲をガブリエル・フォーレ(1845−1924)に依頼した。台本作家フォーショワが詩を元に筋書きを作り、フォーレは過去に創ったピアノ曲なども絡めながら、全8曲からなる作品を完成させる。のちにフォーレ自身の手によって4曲が選ばれ、管弦楽用組曲が編まれた。
イタリア演劇の喜劇役者たちが舞台装置の中で遊んでいると、劇場の観客たちがやってくる。ふだんは目立たない彼らが劇を演じ、喜劇役者たちを楽しませる。

フランスの小説家ドーデの戯曲「アルルの女」。上演の際、ジョルジュ・ビゼー(1838−1875)の手で全27曲からなる付随音楽が作曲された。4曲で構成される第2組曲は、ビゼーの死後、ギローによって編纂されたもの。
舞台はフランス、ローヌ地方。農家の息子フレデリは、アルルの街の闘牛場で見かけた女と恋に落ちる。しかし彼女の身持ちの悪さを知り、また、幼なじみのヴィヴェットの一途な愛を受け入れて、いったんは結婚を決意する。しかし、アルルの女が情夫との駆け落ちを企てていることを知って嫉妬に狂い、祝いのファランドールが踊られる中、納屋の高窓から飛び降りて自ら命を絶つ。

ロベルト・シューマン(1810−1856)の交響曲第3番。「ライン」という表題はシューマンが付けたものではない。しかし、ライン川流域のデュッセルドルフへと転居してすぐに創られたこの曲は、明るく風光明媚なライン川の風景から多くのインスピレーションを受けたのではないだろうか。雄大なラインの流れ。その周りに広がる田園風景。暖かな陽の光や飛び散る水しぶきまで感じられるような、躍動感に溢れている。執筆中、ケルン大聖堂で枢機卿の叙階式が行われたという知らせを受け、第4楽章が追加され、5楽章からなる交響曲が完成した。第4楽章の自筆譜に「荘厳な儀式の性格で」と記されているように、崇高な空気に満ちている。

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ブロカートフィルハーモニー管弦楽団 第31回定期演奏会
2013年2月11日(月祝)  午後2時開演(午後1時30分開場)
かつしかシンフォニーヒルズ モーツァルトホール (京成青砥駅から徒歩8分)

指揮:吉川 武典

フォーレ 組曲 「マスクとベルガマスク」 作品112
ビゼー 「アルルの女」第2組曲
シューマン 交響曲第3番 変ホ長調 「ライン」 作品97

入場料 自由席(一部に指定席がございます)
前売り 700円 当日 1000円(当日券は午後1時から販売開始)
*申し訳ありませんが、小学校入学前のお子さんの入場はご遠慮いただいております。ご了承ください。

チケットお取り扱い
かつしかシンフォニーヒルズチケットセンター(窓口販売のみ。営業時間 10:00-19:00)
東京文化会館チケットサービス TEL 03-5685-0650 http://www.t-bunka.jp/ticket/

公演に関するお問い合わせ先は こちら でご確認下さい。

*車椅子でのご入場をご希望の方は1月31日(木)までに、公演お問い合わせ先までご連絡ください(定員がありますので、お早めにお申し込みください)。
*チケット割引サービス チラシの画像をプリントアウトして当日ホールにお持ちいただくと、前売り料金700円でチケットをご購入いただけます。チラシ1枚で何名さまでも有効です。

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